さんがまた旦那様《だんなさま》を亡《な》くなして、未亡人《びぼうじん》になるとか」
 継子は少し怪訝《けげん》な顔をしてお延を見た。
「延子さんは宅《うち》にいた時と、由雄さんの所へ行ってからと、どっちが気楽なの」
「そりゃ……」
 お延は口籠《くちごも》った。継子は彼女に返答を拵《こしら》える余地を与えなかった。
「今の方が気楽なんでしょう。それ御覧なさい」
 お延は仕方なしに答えた。
「そうばかりにも行かないわ。これで」
「だってあなたが御自分で望んでいらしった方じゃないの、津田さんは」
「ええ、だからあたし幸福よ」
「幸福でも気楽じゃないの」
「気楽な事も気楽よ」
「じゃ気楽は気楽だけれども、心配があるの」
「そう継子さんのように押しつめて来ちゃ敵《かな》わないわね」
「押しつめる気じゃないけれども、解らないから、ついそうなるのよ」

        七十二

 だんだん勾配《こうばい》の急になって来た会話は、いつの間《ま》にか継子の結婚問題に滑《すべ》り込んで行った。なるべくそれを避けたかったお延には、今までの行きがかり上、またそれを避ける事のできない義理があった。経験に乏しい
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