炎」、第3水準1−87−64]《ほのお》のごとく、継子の前に燃え上った。彼女の言葉は継子にとってついに永久の真理その物になった。一般の世間に向って得意であった彼女は、とくに継子に向って得意でなければならなかった。
お延の見た通りの津田が、すぐ継子に伝えられた。日常接触の機会を自分自身にもっていない継子は、わが眼わが耳の範囲外に食《は》み出《だ》している未知の部分を、すべて彼女から与えられた間接の知識で補なって、容易に津田という理想的な全体を造り上げた。
結婚後半年以上を経過した今のお延の津田に対する考えは変っていた。けれども継子の彼に対する考えは毫《ごう》も変らなかった。彼女は飽《あ》くまでもお延を信じていた。お延も今更前言を取り消すような女ではなかった。どこまでも先見の明によって、天の幸福を享《う》ける事のできた少数の果報者として、継子の前に自分を標榜《ひょうぼう》していた。
過去から持ち越したこういう二人の関係を、余儀なく記憶の舞台に躍《おど》らせて、この事件の前に坐らなければならなくなったお延は、辛《つら》いよりもむしろ快よくなかった。それは皆《み》んなが寄ってたかって、今
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