、何とも思わずに暮していた彼女は、今その従妹と肩を並べながら、賑《にぎ》やかな電灯で明るく照らされた廊下の上に立って、またかつて感じた事のない一種の哀愁《あいしゅう》に打たれた。それは軽いものであった。しかし涙に変化しやすい性質《たち》のものであった。そうして今|嫉妬《しっと》の眼で眺めたばかりの相手の手を、固く握り締《し》めたくなるような種類のものであった。彼女は心の中で継子に云った。
「あなたは私より純潔です。私が羨《うら》やましがるほど純潔です。けれどもあなたの純潔は、あなたの未来の夫に対して、何の役にも立たない武器に過ぎません。私のように手落なく仕向けてすら夫は、けっしてこっちの思う通りに感謝してくれるものではありません。あなたは今に夫の愛を繋《つな》ぐために、その貴《たっと》い純潔な生地《きじ》を失わなければならないのです。それだけの犠牲を払って夫のために尽してすら、夫はことによるとあなたに辛《つら》くあたるかも知れません。私はあなたが羨《うらや》ましいと同時に、あなたがお気の毒です。近いうちに破壊しなければならない貴い宝物を、あなたはそれと心づかずに、無邪気にもっているから
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