るか、何をしているか、彼にはまるで分らなかった。彼は下から大きな声を出して、彼女を呼んで見たくなった。すると足の方で医者の声がした。
「やっと済みました」
むやみにガーゼを詰め込まれる、こそばゆい感じのした後《あと》で、医者はまた云った。
「瘢痕《はんこん》が案外堅いんで、出血の恐れがありますから、当分じっとしていて下さい」
最後の注意と共に、津田はようやく手術台から下《お》ろされた。
四十三
診察室を出るとき、後《うしろ》から随《つ》いて来た看護婦が彼に訊《き》いた。
「いかがです。気分のお悪いような事はございませんか」
「いいえ。――蒼《あお》い顔でもしているかね」
自分自身に多少|懸念《けねん》のあった津田はこう云って訊《き》き返さなければならなかった。
創口《きずぐち》にできるだけ多くのガーゼを詰め込まれた彼の感じは、他《ひと》が想像する倍以上に重苦しいものであった。彼は仕方なしにのそのそ歩いた。それでも階子段《はしごだん》を上《あが》る時には、割《さ》かれた肉とガーゼとが擦《こす》れ合《あ》ってざらざらするような心持がした。
お延は階段の上に立
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