あたしに打ち明けて下さるでしょう。それが妹としてのあなたの親切です。あなたがあたしに対する親切を、この場合お感じにならないでも、あたしはいっこう恨《うら》みとは思いません。けれども兄さんとしての津田には、まだ尽して下さる親切をもっていらっしゃるでしょう。あなたがそれを充分もっていらっしゃるのは、あなたの顔つきでよく解《わか》ります。あなたはそんな冷刻な人ではけっしてないのです。あなたはあなたが昨日御自分でおっしゃった通り親切な方に違いないのです」
 お延がこれだけ云って、お秀の顔を見た時、彼女はそこに特別な変化を認めた。お秀は赧《あか》くなる代りに少し蒼白《あおじろ》くなった。そうして度外《どはず》れに急《せ》き込《こ》んだ調子で、お延の言葉を一刻も早く否定しなければならないという意味に取れる言葉|遣《づか》いをした。
「あたしはまだ何にも悪い事をした覚《おぼえ》はないんです。兄さんに対しても嫂《ねえ》さんに対しても、もっているのは好意だけです。悪意はちっとも有りません。どうぞ誤解のないようにして下さい」

        百三十

 お秀の言訳はお延にとって意外であった。また突然であった。その言訳がどこから出て来たのか、また何のためであるかまるで解らなかった。お延はただはっと思った。天恵のごとく彼女の前に露出されたこの時のお秀の背後に何が潜んでいるのだろう。お延はすぐその暗闇《くらやみ》を衝《つ》こうとした。三度目の嘘《うそ》が安々と彼女の口を滑《すべ》って出た。
「そりゃ解ってるのよ。あなたのなすった事も、あなたのなすった精神も、あたしにはちゃんと解ってるのよ。だから隠しだてをしないで、みんな打ち明けてちょうだいな。お厭《いや》?」
 こう云った時、お延は出来得る限りの愛嬌《あいきょう》をその細い眼に湛《たた》えて、お秀を見た。しかし異性に対する場合の効果を予想したこの所作《しょさ》は全く外《はず》れた。お秀は驚ろかされた人のように、卒爾《そつじ》な質問をかけた。
「延子さん、あなた今日ここへおいでになる前、病院へ行っていらしったの」
「いいえ」
「じゃどこか外《ほか》から廻っていらしったの」
「いいえ。宅《うち》からすぐ上ったの」
 お秀はようやく安心したらしかった。その代り後は何にも云わなかった。お延はまだ縋《すが》りついた手を放さなかった。
「よう、秀子さ
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