》に束《つか》ね上《あ》げた。それが済んでから始めて下女を起した。
 食事のできるまでの時間を、下女と共に働らいた彼女は、膳《ぜん》に着いた時、下女から「今日は大変お早うございましたね」と云われた。何にも知らないお時は、彼女の早起を驚ろいているらしかった。また自分が主人より遅く起きたのをすまない事でもしたように考えているらしかった。
「今日は旦那様《だんなさま》のお見舞に行かなければならないからね」
「そんなにお早くいらっしゃるんでございますか」
「ええ。昨日《きのう》行かなかったから今日は少し早く出かけましょう」
 お延の言葉遣《ことばづかい》は平生より鄭寧《ていねい》で片づいていた。そこに或落ちつきがあった。そうしてその落ちつきを裏切る意気があった。意気に伴なう果断も遠くに見えた。彼女の中にある心の調子がおのずと態度にあらわれた。
 それでも彼女はすぐ出かけようとはしなかった。襷《たすき》を外《はず》して盆を持ったお時を相手に、しばらく岡本の話などをした。もと世話になった覚《おぼえ》のあるその家族は、お時にとっても、興味に充《み》ちた題目なので、二人は同じ事を繰り返すようにしてまで、よく彼らについて語り合った。ことに津田のいない時はそうであった。というのは、もし津田がいると、ある場合には、彼一人が除外物《のけもの》にされたような変な結果に陥《おちい》るからであった。ふとした拍子からそんな気下味《きまず》い思いを一二度経験した後で、そこに気をつけ出したお延は、そのほかにまだ、富裕な自分の身内を自慢らしく吹聴《ふいちょう》したがる女と夫から解釈される不快を避けなければならない理由もあったので、お時にもかねてその旨《むね》を言い含めておいたのである。
「御嬢さまはまだどこへもおきまりになりませんのでございますか」
「何だかそんな話もあるようだけれどもね、まだどうなるかよく解らない様子だよ」
「早く好い所へいらっしゃるようになると、結構でございますがね」
「おおかたもうじきでしょう。叔父さんはあんな性急《せっかち》だから。それに継子さんはあたしと違って、ああいう器量好《きりょうよ》しだしね」
 お時は何か云おうとした。お延は下女のお世辞《せじ》を受けるのが苦痛だったので、すぐ自分でその後《あと》をつけた。
「女はどうしても器量が好くないと損ね。いくら悧巧《りこう》でも、
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