ょうたん》がぶら下がっている。肩から四角な箱を腋《わき》の下へ釣るしている。浅黄《あさぎ》の股引《ももひき》を穿《は》いて、浅黄の袖無《そでな》しを着ている。足袋《たび》だけが黄色い。何だか皮で作った足袋のように見えた。
爺さんが真直に柳の下まで来た。柳の下に子供が三四人いた。爺さんは笑いながら腰から浅黄の手拭《てぬぐい》を出した。それを肝心綯《かんじんより》のように細長く綯《よ》った。そうして地面《じびた》の真中に置いた。それから手拭の周囲《まわり》に、大きな丸い輪を描《か》いた。しまいに肩にかけた箱の中から真鍮《しんちゅう》で製《こし》らえた飴屋《あめや》の笛《ふえ》を出した。
「今にその手拭が蛇《へび》になるから、見ておろう。見ておろう」と繰返《くりかえ》して云った。
子供は一生懸命に手拭を見ていた。自分も見ていた。
「見ておろう、見ておろう、好いか」と云いながら爺さんが笛を吹いて、輪の上をぐるぐる廻り出した。自分は手拭ばかり見ていた。けれども手拭はいっこう動かなかった。
爺さんは笛をぴいぴい吹いた。そうして輪の上を何遍も廻った。草鞋《わらじ》を爪立《つまだ》てるように、抜
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