ょうたん》がぶら下がっている。肩から四角な箱を腋《わき》の下へ釣るしている。浅黄《あさぎ》の股引《ももひき》を穿《は》いて、浅黄の袖無《そでな》しを着ている。足袋《たび》だけが黄色い。何だか皮で作った足袋のように見えた。
爺さんが真直に柳の下まで来た。柳の下に子供が三四人いた。爺さんは笑いながら腰から浅黄の手拭《てぬぐい》を出した。それを肝心綯《かんじんより》のように細長く綯《よ》った。そうして地面《じびた》の真中に置いた。それから手拭の周囲《まわり》に、大きな丸い輪を描《か》いた。しまいに肩にかけた箱の中から真鍮《しんちゅう》で製《こし》らえた飴屋《あめや》の笛《ふえ》を出した。
「今にその手拭が蛇《へび》になるから、見ておろう。見ておろう」と繰返《くりかえ》して云った。
子供は一生懸命に手拭を見ていた。自分も見ていた。
「見ておろう、見ておろう、好いか」と云いながら爺さんが笛を吹いて、輪の上をぐるぐる廻り出した。自分は手拭ばかり見ていた。けれども手拭はいっこう動かなかった。
爺さんは笛をぴいぴい吹いた。そうして輪の上を何遍も廻った。草鞋《わらじ》を爪立《つまだ》てるように、抜足をするように、手拭に遠慮をするように、廻った。怖《こわ》そうにも見えた。面白そうにもあった。
やがて爺さんは笛をぴたりとやめた。そうして、肩に掛けた箱の口を開けて、手拭の首を、ちょいと撮《つま》んで、ぽっと放《ほう》り込《こ》んだ。
「こうしておくと、箱の中で蛇《へび》になる。今に見せてやる。今に見せてやる」と云いながら、爺さんが真直に歩き出した。柳の下を抜けて、細い路を真直に下りて行った。自分は蛇が見たいから、細い道をどこまでも追《つ》いて行った。爺さんは時々「今になる」と云ったり、「蛇になる」と云ったりして歩いて行く。しまいには、
「今になる、蛇になる、
きっとなる、笛が鳴る、」
と唄《うた》いながら、とうとう河の岸へ出た。橋も舟もないから、ここで休んで箱の中の蛇を見せるだろうと思っていると、爺さんはざぶざぶ河の中へ這入《はい》り出した。始めは膝《ひざ》くらいの深さであったが、だんだん腰から、胸の方まで水に浸《つか》って見えなくなる。それでも爺さんは
「深くなる、夜になる、
真直になる」
と唄いながら、どこまでも真直に歩いて行った。そうして髯《ひげ》も顔も頭も頭巾《
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