事をしているとどこかでかんかん石を割る音が聞えたので、敵も暗い中を一寸二寸と近寄って来た事が知れたのだと云う。爆発薬の御蔭《おかげ》で外濠《そとぼり》を潰《つぶ》したのはこの時の事でありますと、中尉はその潰れた土山の上に立って我々を顧みた。我々も無論その上に立っている。この下を掘ればいくらでも死骸《しがい》が出て来るのだと云う。
 土山の一隅《ひとすみ》が少し欠けて、下の方に暗い穴が半分見える。その天井《てんじょう》が厚さ六尺もあろうと云うセメントででき上っている。身を横にして、その穴に這い込みながら、だらだらと石の廻廊《かいろう》に降りた時に、仰向《あおむ》いて見て始めてその堅固なのに気がついた。外濠を崩《くず》した上に、この厚い壁を破壊しなければ、砲台をどうする事もできないのは攻手に取って非常な困難である。しかもこの小さな裂け目から無理に割り込んで、一寸二寸とじりじりにセメントで築上げた窖道を専領《せんりょう》するに至っては、全く人間以上の辛抱比《しんぼうくら》べに違ない。その時両軍の兵士は、この暗い中で、わずかの仕切りを界《さかい》に、ただ一尺ほどの距離を取って戦《いくさ》をした
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