の量が減ったでしょうかてような事を、真面目《まじめ》くさって質問していた。
四十一
橋本が博士《はかせ》になったり、ならなかったりした話がある。大連の大和《やまと》ホテルにいる時分、満鉄から封書が届いた。その表に橋本農学博士殿と叮嚀《ていねい》に書いてあったのを乙《おつ》に眺めながら、これだから厭《いや》になっちまうと云って余の方を向いて苦笑したから、先生は学者ぶって、むやみに博士|呼《よば》わりをされるのを苦にする意味なんだろうと鑑定して、取り合ってやらなかった。実際こんな事が苦になるくらいなら、始めから博士にならなければ好いと思ったからである。その時はそれですんだ。
余は橋本をもって固《もと》より農学博士と信じていた。是公《ぜこう》もそう信じていた。現にある人に向って橋本って農学博士さと説明しているのを聞いた。余に至っては、いつかの新聞で、本人の博士になった事をたしかに承知した記憶がある。それで大連を立って北に行く時も、栄誉ある博士の同伴者だと云う自覚がちゃんとあった。ところが毎日毎晩一つ鍋《なべ》のものを突《つ》ついて進行しているうちに、何かの拍子《ひょう
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