文芸委員は何をするか
夏目漱石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)何人《なんぴと》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|各自《めいめい》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ]
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上
政府が官選文芸委員の名を発表するの日は近きにありと伝えられている。何人《なんぴと》が進んでその嘱《しょく》に応ずるかは余《よ》の知る限りでない。余はただ文壇のために一言して諸君子の一考《いっこう》を煩《わずら》わしたいと思うだけである。
政府はある意味において国家を代表している。少くとも国家を代表するかの如き顔をして万事《ばんじ》を振舞《ふるま》うに足る位の権力家である。今政府の新設せんとする文芸院は、この点においてまさしく国家的機関である。従って文芸院の内容を構成する委員らは、普通文士の格を離れて、突然国家を代表すべき文芸家とならなければならない。しかも自家に固有なる作物《さくぶつ》と評論と見識との齎《もたら》した価値によって、国家を代表するのではない。実行上の権力において自己より遥
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