という悪意は毛頭無いのですけれども、まあなるべく短かく切上げる事にして、そうして――まだ後にも面白いのがだいぶありますから、その方で埋め合せをして、まず数でコナすようなことにしようと思う。実際この暑いのにこうお集まりになって竹の皮へ包んだ寿司《すし》のように押し合っていてはたまりますまい。また講演者の方でも周囲前後左右から出る人の息だけでも――ちょっとここへ立って御覧になればすぐ分りますが――実際容易なものではありません。実はこういうように原稿紙へノートが取ってありますから、時々これを見ながら進行すれば順序もよく整い遺漏《いろう》も少なく、大変都合が好いのですけれども、そんな手温《てぬる》い事をしていてはとても諸君がおとなしく聴いていて下さるまいと思うから、ところどころ――ではない大部分|端折《はしょ》ってしまってやるつもりであります。しかしもしおとなしく聴いて下されば十分にやるかも知れない。やろうと思えばやれるのです。
問題はあすこに書いてある通り「文芸と道徳」と云うのですが、御承知の通り私は小説を書いたり批評を書いたり大体文学の方に従事しているために文芸の方のことをお話する傾《か
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