何のために馳《か》け込むようにこの家を襲《おそ》ったかの原因について、また新らしく考え出した。彼は須永の顔を見たら随分過激な言葉を使ってもその不都合を責めた上、僕はもう二度とあすこの門は潜《くぐ》らないつもりだから、そう思ってくれたまえぐらいの台詞《せりふ》を云って帰る気でいたのに、肝心《かんじん》の須永は留守《るす》で、事情も何も知らない彼の母から、逆《さか》さにいろいろな話をしかけられたので、怒《おこ》ってやろうという気は無論抜けてしまったのである。が、それでも行きがかり上、田口と会見を遂《と》げ得なかった顛末《てんまつ》だけは、一応この母の耳へでも構わないから入れておく必要があるだろう。それには話の中に内幸町へ行くとか行かないとかが問題になっている今が一番よかろう。――こう敬太郎は思った。

        十二

「実はその内幸町の方へ今日私も出たんですが」と云い出すと、自分の息子の事ばかり考えていた母は、「おやそうでございましたか」とやっと気がついてすまないという顔つきをした。この間から敬太郎《けいたろう》が躍起《やっき》になって口を探《さが》している事や、探しあぐんで須永《
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