》ぎる植込がこんもり黒ずんで立っているのとで、幾分か厳《いか》めしい景気を夜陰に添えたまでで、門内に這入《はい》ったところでは見付《みつき》ほど手広な住居《すまい》でもなかった。
 玄関には西洋擬《せいようまが》いの硝子戸《ガラスど》が二枚|閉《た》ててあったが、頼むといっても、電鈴《ベル》を押しても、取次がなかなか出て来ないので、敬太郎《けいたろう》はやむを得ずしばらくその傍《そば》に立って内の様子を窺《うか》がっていた。すると、どこからかようやく足音が聞こえ出して、眼の前の擦硝子《すりガラス》がぱっと明るくなった。それから庭下駄《にわげた》で三和土《たたき》を踏む音が二足三足したと思うと、玄関の扉が片方|開《あ》いた。敬太郎はこの際取次の風采《ふうさい》を想望するほどの物数奇《ものずき》もなく、全く漫然と立っていただけであるが、それでも絣《かすり》の羽織《はおり》を着た書生か、双子《ふたこ》の綿入を着た下女が、一応御辞儀をして彼の名刺を受取る事とのみ期待していたのに、今《いま》戸を半分開けて彼の前に立ったのは、思いも寄らぬ立派な服装《なり》をした老紳士であった。電気の光を背中に受け
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