暢《りゅうちょう》で羨《うらや》ましいくらい旨《うま》く出ます。僕はとても及ばないと思って感心して聞いていました。けれども英語の達者なこの女から呼ばれた西洋人はなかなか下りて来ませんでした。女は泳げないんだか、泳ぎたくないんだか、胸から下を水に浸《つ》けたまま波の中に立っていました。すると先へ下りた方の西洋人が女の手を執《と》って、深い所へ連れて行こうとしました。女は身を竦《すく》めるようにして拒《こば》みました。西洋人はとうとう海の中で女を横に抱《だ》きました。女の跳《は》ねて水を蹴《け》る音と、その笑いながら、きゃっきゃっ騒ぐ声が、遠方まで響きました。(午前十時)」
「今度は下の座敷に芸者を二人連れて泊っていた客が端艇《ボート》を漕《こ》ぎに出て来ました。この端艇はどこから持って来たか分りませんが、極《きわ》めて小さいかつすこぶる危しいものです。客は漕いでやるからと云って、芸者を乗せようとしますが、芸者の方では怖《こわ》いからと断ってなかなか乗りません。しかしとうとう客の意の通りになりました。その時年の若い方が、わざわざ喫驚《びっくり》して見せる科《しな》が、よほど馬鹿らしゅうござ
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