ねん》らしくこういう問をかけた。彼より経験に富んだ年長者をもって自任する僕にも、この点に関する彼の未来はほとんど想像できなかった。僕はただ自分に信念がなくって、わが心の事を他《ひと》に尋ねて安心したいと願う彼の胸の裏《うち》を憐《あわ》れに思った。上部《うわべ》はいかにも優しそうに見えて、実際は極《きわ》めて意地の強くでき上った彼が、こんな弱い音《ね》を出すのは、ほとんど例《ためし》のない事だったからである。僕は僕の力の及ぶ限り彼の心に保証を与えた。
「そんな心配はするだけ損だよ。おれが受合ってやる。大丈夫だから遊んで来るが好《い》い。御前の御母さんはおれの姉だ。しかもおれよりも学問をしないだけに、よほど純良にできている、誰からも敬愛されべき婦人だ。あの姉と君のような情愛のある子がどうして離れっ切りに離れられるものか。大丈夫だから安心するが好い」
 市蔵は僕の言葉を聞いて実際安心したらしく見えた。僕もやや安心した。けれども一方では、このくらい根のない慰藉《いしゃ》の言葉が、明晰《めいせき》な頭脳を有《も》った市蔵に、これほどの影響を与えたとすれば、それは彼の神経がどこか調子を失なってい
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