た。けれども彼女の強さは単に優《やさ》しい一図から出た女気《おんなぎ》の凝《こ》り塊《かたま》りとのみ解釈していた。ところが今僕の前に現われた彼女は、ただ勝気に充ちただけの、世間にありふれた、俗っぽい婦人としか見えなかった。僕は心を動かすところなく、彼女の涙の間からいかなる説明が出るだろうと待ち設けた。彼女の唇《くちびる》を洩《も》れるものは、自己の体面を飾る強弁よりほかに何もあるはずがないと、僕は固く信じていたからである。彼女は濡《ぬ》れた睫毛《まつげ》を二三度|繁叩《しばたた》いた。
「あなたはあたしを御転婆《おてんば》の馬鹿だと思って始終《しじゅう》冷笑しているんです。あなたはあたしを……愛していないんです。つまりあなたはあたしと結婚なさる気が……」
「そりゃ千代ちゃんの方だって……」
「まあ御聞きなさい。そんな事は御互だと云うんでしょう。そんならそれで宜《よ》うござんす。何も貰《もら》って下さいとは云やしません。ただなぜ愛してもいず、細君にもしようと思っていないあたしに対して……」
 彼女はここへ来て急に口籠《くちごも》った。不敏な僕はその後へ何が出て来るのか、まだ覚《さと》れ
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