ても好いというつもりか。あるいは高木と僕と戦うところを眺《なが》めて面白かったというつもりか。または高木を僕の眼の前に出して、こういう人がいるのだから、早く思い切れというつもりか。――僕は技巧の二字をどこまでも割って考えた。そうして技巧なら戦争だと考えた。戦争ならどうしても勝負に終るべきだと考えた。
 僕は寝つかれないで負けている自分を口惜《くや》しく思った。電灯は蚊帳を釣るとき消してしまったので、室《へや》の中に隙間《すきま》もなく蔓延《はびこ》る暗闇《くらやみ》が窒息するほど重苦しく感ぜられた。僕は眼の見えないところに眼を明けて頭だけ働らかす苦痛に堪《た》えなくなった。寝返りさえ慎んで我慢していた僕は、急に起《た》って室《へや》を明るくした。ついでに縁側《えんがわ》へ出て雨戸を一枚細目に開けた。月の傾むいた空の下には動く風もなかった。僕はただ比較的冷かな空気を肌と咽喉《のど》に受けただけであった。

        三十二

 翌日《あくるひ》はいつも一人で寝ている時より一時間半も早く眼が覚《さ》めた。すぐ起きて下へ降りると、銀杏返《いちょうがえ》しの上へ白地の手拭《てぬぐい》を被
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