て、すぐ階下《した》へ下げた。僕は一時間ほど書物を伏せたり立てたりして少し草臥《くたび》れたから煙草《たばこ》を吹かして休んでいると、作がまた梯子段から顔を出した。そうして、私でよろしければ何ぞ致しましょうかと尋ねた。僕は作に何かさせてやりたかった。不幸にして西洋文字の読めない彼女には手の出せない書物の整理なので、僕は気の毒だけれども、なに好いよと断ってまた下へ追いやった。
作の事をそう一々云う必要もないが、つい前からの関係で、彼女のその時の行動を覚えていたから話したのである。僕は一本の巻煙草《まきたばこ》を呑み切った後《あと》でまた整理にかかった。今度は作のためにわれ一人《いちにん》の世界を妨《さま》たげられる虞《おそれ》なしに、書架の二段目を一気に片づけた。その時僕は久しく友達に借りて、つい返すのを忘れていた妙な書物を、偶然|棚《たな》の後《うしろ》から発見した。それはむしろ薄い小形の本だったので、ついほかのものの向側《むこうがわ》へ落ちたなり埃だらけになって、今日《きょう》まで僕の眼を掠《かす》めていたのである。
二十七
僕にこの本を貸してくれたものはある
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