。吾一もすやすや寝入《ねい》った。ただ僕だけは開《あ》いている眼をわざと閉じて、更《ふ》けるまでいろいろな事を考えた。

        二十

 翌日《あくるひ》眼が覚《さ》めると、隣に寝ていた吾一の姿がいつの間にかもう見えなくなっていた。僕は寝足らない頭を枕の上に着けて、夢とも思索とも名のつかない路《みち》を辿《たど》りながら、時々別種の人間を偸《ぬす》み見るような好奇心をもって、叔父の寝顔を眺《なが》めた。そうして僕も寝ている時は、傍《はた》から見ると、やはりこう苦《く》がない顔をしているのだろうかと考えなどした。そこへ吾一が這入《はい》って来て、市《いっ》さんどうだろう天気はと相談した。ちょっと起きて見ろと促《うな》がすので、起き上って縁側《えんがわ》へ出ると、海の方には一面に柔かい靄《もや》の幕がかかって、近い岬《みさき》の木立さえ常の色には見えなかった。降ってるのかねと僕は聞いた。吾一はすぐ庭先へ飛び下りて、空を眺《なが》め出したが、少し降ってると答えた。
 彼は今日の船遊びの中止を深く気遣《きづか》うもののごとく、二人の姉まで縁側へ引張出して、しきりにどうだろうどうだろう
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