の女だと僕は常から信じていたからである。
八
意地の強い僕は母を嬉《うれ》しがらせるよりもなるべく自我を傷《きずつ》けないようにと祈った。その結果千代子が僕の知らない間に、母から説き落されてはと掛念して、暗にそれを防ぐ分別をした。母は彼女の生れ落ちた当初すでに僕の嫁ときめただけあって、多くある姪《めい》や甥《おい》の中で、取り分け千代子を可愛《かわい》がった。千代子も子供の時分から僕の家を生家のごとく心得て遠慮なく寝泊《ねとま》りに来た。その縁故で、田口と僕の家が昔に比べると比較的|疎《うと》くなった今日《こんにち》でも、千代子だけは叔母さん叔母さんと云って、生《うみ》の親にでも逢いに来るような朗らかな顔をして、しげしげ出入《でいり》をしていた。単純な彼女は、自分の身を的《まと》に時々起る縁談をさえ、隠すところなく母に打ち明けた。人の好い母はまたそれを素直に聞いてやるだけで、恨《うら》めしい眼つき一つも見せ得なかった。僕の恐れる懇談は、こういう関係の深い二人の間に、いつ起らないとも限らなかったのである。
僕の分別というのはまずこの点に関して、当分母の口を塞《ふさ
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