ても多くを語る機会を持たなかった。ただある時叔母と僕との間にこんな会話が取り換わされた。
「市《いっ》さんももうそろそろ奥さんを探さなくっちゃなりませんね。姉さんはとうから心配しているようですよ」
「好いのがあったら母に知らしてやって下さい」
「市さんにはおとなしくって優《やさ》しい、親切な看護婦みたような女がいいでしょう」
「看護婦みたような嫁はないかって探しても、誰も来手《きて》はあるまいな」
 僕が苦笑しながら、自《みずか》ら嘲《あざ》けるごとくこう云った時、今まで向うの隅《すみ》で何かしていた千代子が、不意に首を上げた。
「あたし行って上げましょうか」
 僕は彼女の眼を深く見た。彼女も僕の顔を見た。けれども両方共そこに意味のある何物をも認めなかった。叔母は千代子の方を振り向きもしなかった。そうして、「御前のようなむきだしのがらがらした者が、何で市さんの気に入るものかね」と云った。僕は低い叔母の声のうちに、窘《たし》なめるようなまた怖《おそ》れるような一種の響を聞いた。千代子はただからからと面白そうに笑っただけであった。その時百代子も傍《そば》にいた。これは姉の言葉を聞いて微笑し
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