う問題についてただの一日も頭を使った事がない。出た時の成績はむしろ好い方であった。席次を目安《めやす》に人を採《と》る今の習慣を利用しようと思えば、随分友達を羨《うらや》ましがらせる位置に坐り込む機会もないではなかった。現に一度はある方面から人選《にんせん》の依託《いたく》を受けた某教授に呼ばれて意向を聞かれた記憶さえ有《も》っている。それだのに僕は動かなかった。固《もと》より自慢でこう云う話をするのではない。真底を打ち明ければむしろ自慢の反対で、全く信念の欠乏から来た引込《ひっこ》み思案《じあん》なのだから不愉快である。が、朝から晩まで気骨を折って、世の中に持て囃《はや》されたところで、どこがどうしたんだという横着は、無論断わる時からつけ纏《まと》っていた。僕は時めくために生れた男ではないと思う。法律などを修《おさ》めないで、植物学か天文学でもやったらまだ性《しょう》に合った仕事が天から授かるかも知れないと思う。僕は世間に対してははなはだ気の弱い癖に、自分に対しては大変辛抱の好い男だからそう思うのである。
 こういう僕のわがままをわがままなりに通してくれるものは、云うまでもなく父が遺
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