厄介になっていたのだから、今更《いまさら》改ためて父からそれを聞かされるのを妙に思った。黙って坐っていると、父は骨ばかりになった顔の筋を無理に動かすようにして、「今のように腕白じゃ、御母さんも構ってくれないぞ。もう少しおとなしくしないと」と云った。僕は母が今まで構ってくれたんだからこのままの僕でたくさんだという気が充分あった。それで父の小言《こごと》をまるで必要のない余計な事のように考えて病室を出た。
 父が死んだ時母は非常に泣いた。葬式が出る間際《まぎわ》になって、僕は着物を着換えさせられたまま、手持無沙汰《てもちぶさた》だから、一人|縁側《えんがわ》へ出て、蒼《あお》い空を覗《のぞ》き込むように眺《なが》めていると、白無垢《しろむく》を着た母が何を思ったか不意にそこへ出て来た。田口や松本を始め、供《とも》に立つものはみんな向《むこう》の方で混雑《ごたごた》していたので、傍《はた》には誰も見えなかった。母は突然《いきなり》自分の坊主頭へ手を載《の》せて、泣き腫《は》らした眼を自分の上に据《す》えた。そうして小さい声で、「御父さんが御亡《おな》くなりになっても、御母さんが今まで通り可愛
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