細い枝が遥《はる》か頭の上で交叉《こうさ》するほど繁《しげ》く両側から出ているのに、自分の通る所は存外明るいのを奇妙に思って、千代子は折々頭を上げては、遠い空を眺《なが》めた。宅《うち》へ着いて遺骨を仏壇の前に置いた時、すぐ寄って来た小供が、葢《ふた》を開けて見せてくれというのを彼女は断然拒絶した。
 やがて家内中同じ室《へや》で昼飯の膳《ぜん》に向った。「こうして見ると、まだ子供がたくさんいるようだが、これで一人もう欠けたんだね」と須永が云い出した。
「生きてる内はそれほどにも思わないが、逝《ゆ》かれて見ると一番惜しいようだね。ここにいる連中のうちで誰か代りになればいいと思うくらいだ」と松本が云った。
「非道《ひど》いわね」と重子が咲子に耳語《ささや》いた。
「叔母さんまた奮発して、宵子さんと瓜二《うりふた》つのような子を拵《こしら》えてちょうだい。可愛《かわい》がって上げるから」
「宵子と同じ子じゃいけないでしょう、宵子でなくっちゃ。御茶碗や帽子と違って代りができたって、亡《な》くしたのを忘れる訳にゃ行かないんだから」
「己《おれ》は雨の降る日に紹介状を持って会いに来る男が厭《いや
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