いものを袂《たもと》から出して叔母に渡した。御仙がそれを受付口へ見せている間に、千代子は須永を窘《たし》なめた。
「市さん、あなた本当に悪《にく》らしい方《かた》ね。持ってるなら早く出して上げればいいのに。叔母さんは宵子さんの事で、頭がぼんやりしているから忘れるんじゃありませんか」
須永はただ微笑して立っていた。
「あなたのような不人情な人はこんな時にはいっそ来ない方がいいわ。宵子さんが死んだって、涙一つ零《こぼ》すじゃなし」
「不人情なんじゃない。まだ子供を持った事がないから、親子の情愛がよく解らないんだよ」
「まあ。よく叔母さんの前でそんな呑気《のんき》な事が云えるのね。じゃあたしなんかどうしたの。いつ子供持った覚《おぼえ》があって」
「あるかどうか僕は知らない。けれども千代ちゃんは女だから、おおかた男より美くしい心を持ってるんだろう」
御仙は二人の口論を聞かない人のように、用事を済ますとすぐ待合所の方へ歩いて行った。そこへ腰をかけてから、立っている千代子を手招きした。千代子はすぐ叔母の傍《そば》へ来て座に着いた。須永も続いて這入《はい》って来た。そうして二人の向側《むこうがわ
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