、差向いで坐る時間の欠乏とが、容易に打ち解けがたい境遇に彼らを置き去りにした。彼らの間に取り換わされた言葉は、無論形式だけを重んずる堅苦しいものではなかったが、大抵は五分とかからない当用に過ぎないので、親しみはそれほど出る暇がなかった。彼らが公然と膝《ひざ》を突き合わせて、例になく長い時間を、遠慮の交《まじ》らない談話に更《ふ》かしたのは、正月|半《なか》ばの歌留多会《かるたかい》の折であった。その時敬太郎は千代子から、あなた随分|鈍《のろ》いのねと云われた。百代子からは、あたしあなたと組むのは厭《いや》よ、負けるにきまってるからと怒《おこ》られた。
それからまた一カ月ほど経《た》って、梅の音信《たより》の新聞に出る頃、敬太郎はある日曜の午後を、久しぶりに須永の二階で暮した時、偶然遊びに来ていた千代子に出逢《であ》った。三人してそれからそれへと纏《まと》まらない話を続けて行くうちに、ふと松本の評判が千代子の口に上《のぼ》った。
「あの叔父さんも随分変ってるのね。雨が降ると一しきりよく御客を断わった事があってよ。今でもそうかしら」
二
「実は僕も雨の降る日に行って断
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