つは安心して使えるだろうかとか、まあそんな事ばかり考えているんだね。ああなると女に惚《ほ》れられても、こりゃ自分に惚れたんだろうか、自分の持っている金に惚れたんだろうか、すぐそこを疑ぐらなくっちゃいられなくなるんです。美人でさえそうなんだから君見たいな野郎が窮屈な取扱を受けるのは当然だと思わなくっちゃいけない。そこが田口の田口たるところなんだから」
敬太郎はこの批評で田口という男が自分にも判切《はっきり》呑み込めたような気がした。けれどもこういう風に一々彼を肯《うけが》わせるほどの判断を、彼の頭に鉄椎《てっつい》で叩《たた》き込むように入れてくれる松本はそもそも何者だろうか、その点になると敬太郎は依然として茫漠《ぼうばく》たる雲に対する思があった。批評に上《のぼ》らない前の田口でさえ、この男よりはかえって活きた人間らしい気がした。
同じ松本について見ても、この間の晩神田の洋食屋で、田口の娘を相手にして珊瑚樹《さんごじゅ》の珠《たま》がどうしたとかこうしたとか云っていた時の方が、よっぽど活きて動いていた。今彼の前に坐《すわ》っているのは、大きなパイプを銜《くわ》えた木像の霊が、口を利
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