ら、高等淫売だと云ってくれたまえ」
「はあ」
「はあじゃいけない、たしかにそう云わなくっちゃ。云えますか、君」
敬太郎は現代に教育された青年の一人として、こういう意味の言葉を、年長者の前で口にする無遠慮を憚《はば》かるほどの男ではなかった。けれども松本が強《し》いてこの四字を田口の耳へ押し込もうとする奥底には、何か不愉快なある物が潜《ひそ》んでいるらしく思われるので、そう軽々しい調子で引き受ける気も起らなかった。彼が挨拶《あいさつ》に困ってむずかしい顔をしていると、それを見た松本は、「何、君心配しないでもいいですよ。相手が田口だもの」と云ったが、しばらくしてやっと気がついたように、「君は僕と田口との関係をまだ知らないんでしたね」と聞いた。敬太郎は「まだ何にも知りません」と答えた。
十三
「その関係を話すと、君が田口に向ってあの女の事を高等淫売《こうとういんばい》だと云う勇気が出悪《でにく》くなるだけだからつまり僕には損になるんだが、いつまで罪もない君を馬鹿にするのも気の毒だから、聞かして上げよう」
こういう前置を置いた上、松本は田口と自分が社会的にどう交渉してい
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