感じを、少し不意を打たれた気味の敬太郎に投げ込んだのは事実であった。
「失礼ながら御家族は大勢でいらっしゃいますか」
 敬太郎は自《みず》から高等遊民と称する人に対して、どういう訳かまずこういう問がかけて見たかった。すると松本は「ええ子供がたくさんいます」と答えて、敬太郎の忘れかかっていたパイプからぱっと煙を出した。
「奥さんは……」
「妻《さい》は無論います。なぜですか」
 敬太郎は取り返しのつかない愚《ぐ》な問を出して、始末に行かなくなったのを後悔した。相手がそれほど感情を害した様子を見せないにしろ、不思議そうに自分の顔を眺めて、解決を予期している以上は、何とか云わなければすまない場合になった。
「あなたのような方が、普通の人間と同じように、家庭的に暮して行く事ができるかと思ってちょっと伺ったまでです」
「僕が家庭的に……。なぜ。高等遊民だからですか」
「そう云う訳でも無いんですが、何だかそんな心持がしたからちょっと伺がったのです」
「高等遊民は田口などよりも家庭的なものですよ」
 敬太郎はもう何も云う事がなくなってしまった。彼の頭脳の中では、返事に行き詰まった困却と、ここで問題を
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