思議に聞こえた。彼はなぜ雨が降っては面会に差支《さしつか》えるのか直《すぐ》反問したくなった。けれども下女に議論を仕かけるのも一種変な場合なので、「じゃ御天気の日に伺がえば御目にかかれるんですね」と念晴《ねんばら》しに聞き直して見た。下女はただ「はい」と答えただけであった。敬太郎は仕方なしにまた雨の降る中へ出た。ざあと云う音が急に烈《はげ》しく聞こえる中に、子供の鳴らす太鼓がまだどんどんと響いていた。彼は矢来の坂を下《お》りながら変な男があったものだという観念を数度《すど》くり返した。田口がただでさえ会《あ》い悪《にく》いと云ったのは、こんなところを指すのではなかろうかとも考えた。その日は家《うち》へ帰っても、気分が中止の姿勢に余儀なく据《す》えつけられたまま、どの方角へも進行できないのが苦痛になった。久しぶりに須永《すなが》の家《うち》へでも行って、この間からの顛末《てんまつ》を茶話に半日を暮らそうかと考えたが、どうせ行くなら、今の仕事に一段落つけて、自分にも見当《けんとう》の立った筋を吹聴《ふいちょう》するのでなくては話しばいもしないので、ついに行かずじまいにしてしまった。
 翌日
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