すればよかろう、我慢なさい」
「いえ結構です」
「ついでに女の方へも一通書きましょうか」
「女も御存じなのですか」
「ことによると知ってるかも知れません」と答えた田口は何だか意味のありそうに微笑した。
「御差支《おさしつかえ》さえなければ、おついでに一本書いていただいても宜《よろ》しゅうございます」と敬太郎も冗談《じょうだん》半分に頼んだ。
「まあ止した方が安全でしょうね。あなたのような年の若い男を紹介して、もし間違でもできると責任問題だから。浪漫《ローマン》―何とか云うじゃありませんか、あなたのような人の事を。私《わたし》ゃ学問がないから、今頃|流行《はや》るハイカラな言葉を直《すぐ》忘れちまって困るが、何とか云いましたっけね、あの、小説家の使う言葉は。……」
 敬太郎はまさかそりゃこう云う言葉でしょうと教える気にもなれなかった。ただエヘヘと馬鹿みたように笑っていた。そうして長居をすればするほど、だんだん非道《ひど》く冷かされそうなので、心の内では、この一段落がついたら、早く切り上げて帰ろうと思った。彼は田口のくれた紹介状を懐《ふところ》に収めて、「では二三日|内《うち》にこれを持っ
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