責任のあるなしにかかわらず、纏《まと》まった形となって頭の中には現われ悪《にく》かった。それでこう云った。――
「肉体上の関係はあるかも知れませんが、無いかも分りません」
田口はただ微笑した。そこへ例の袴《はかま》を穿《は》いた書生が、一枚の名刺を盆に載《の》せて持って来た。田口はちょっとそれを受取ったまま、「まあ分らないところが本当でしょう」と敬太郎に答えたが、すぐ書生の方を見て、「応接間へ通しておいて……」と命令した。先刻《さっき》からよほど窮していた矢先だから、敬太郎はこの来客を好い機《しお》に、もうここで切り上げようと思って身繕《みづくろ》いにかかると、田口はわざわざ彼の立たない前にそれを遮《さえ》ぎった。そうして敬太郎の辟易《へきえき》するのに頓着《とんじゃく》なくなお質問を進行させた。そのうちで敬太郎の明瞭《めいりょう》に答えられるのはほとんど一カ条もなかったので、彼は大学で受けた口答試験の時よりもまだ辛《つら》い思いをした。
「じゃこれぎりにしますが、男と女の名前は分りましたろう」
田口の最後と断《ことわ》ったこの問に対しても、敬太郎は固《もと》より満足な返事を有《も
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