ば夫婦だとか、兄弟《きょうだい》だとか、またはただの友達だとか、情婦《いろ》だとかですね。いろいろな関係があるうちで何だと思いますか」
「私も女を見た時に、処女だろうか細君だろうかと考えたんですが……しかしどうも夫婦じゃないように思います」
「夫婦でないにしてもですね。肉体上の関係があるものと思いますか」

        五

 敬太郎《けいたろう》の胸にもこの疑《うたがい》は最初から多少|萌《きざ》さないでもなかった。改ためて自分の心を解剖して見たら、彼ら二人の間に秘密の関係がすでに成立しているという仮定が遠くから彼を操《あやつ》って、それがために偵察《ていさつ》の興味が一段と鋭どく研《と》ぎ澄まされたのかも知れなかった。肉と肉の間に起るこの関係をほかにして、研究に価する交渉は男女《なんにょ》の間に起り得るものでないと主張するほど彼は理論家ではなかったが、暖たかい血を有《も》った青年の常として、この観察点から男女《なんにょ》を眺《なが》めるときに、始めて男女らしい心持が湧《わ》いて来るとは思っていたので、なるべくそこを離れずに世の中を見渡したかったのである。年の若い彼の眼には、人間
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