と云う実際問題の方が頭に浮いて来ると、なおさらそういう感じが深くなった。彼は一日の午後から宵《よい》へかけて、妙に一種の空気に酔わされた気分で活動した自覚はたしかにあるが、いざその活動の結果を、普通の人間が処世上に利用できるように、筋の立った報告に纏《まと》める段になると、自分の引き受けた仕事は成効《せいこう》しているのか失敗しているのかほとんど分らなかった。したがって洋杖《ステッキ》の御蔭《おかげ》を蒙《こうむ》っているのか、いないのかも判然しなかった。床の中で前後をくり返した敬太郎には、まさしくその御蔭を蒙っているらしくも見えた。またけっしてその御蔭を蒙っていないようにも思われた。
 彼はともかくも二日酔の魔を払い落してからの事だと決心して、急に夜着《よぎ》を剥《は》ぐって跳《は》ね起きた。それから洗面所へ下りて氷るほど冷めたい水で頭をざあざあ洗った。これで昨日《きのう》の夢を髪の毛の根本から振い落して、普通の人間に立ち還ったような気になれたので、彼は景気よく三階の室《へや》に上《のぼ》った。そこの窓を潔《いさ》ぎよく明け放した彼は、東向に直立して、上野の森の上から高く射す太陽の光
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