》しまなければならないので、眼のやりどころに困るという風で、ただ正面をぽかんと見廻した。すると勝手の上《あが》り口《くち》の方から、給仕《ボーイ》が白い皿を二つ持って入って来て、それを古いのと引き更《か》えに、二人の前へ置いて行った。
「小鳥だよ。食べないか」と男が云った。
「妾《あたし》もうたくさん」
女は焼いた小鳥に手を触れない様子であった。その代り暇のできた口を男よりは余計動かした。二人の問答から察すると、女の男にくれと逼《せま》ったのは珊瑚樹《さんごじゅ》の珠《たま》か何からしい。男はこういう事に精通しているという口調《くちょう》で、いろいろな説明を女に与えていた。が、それは敬太郎には興味もなければ、解りもしない好事家《こうずか》の嬉《うれ》しがる知識に過ぎなかった。練物《ねりもの》で作ったのへ指先の紋《もん》を押しつけたりして、時々|旨《うま》くごまかした贋物《がんぶつ》があるが、それは手障《てざわ》りがどこかざらざらするから、本当の古渡《こわた》りとは直《すぐ》区別できるなどと叮嚀《ていねい》に女に教えていた。敬太郎は前後《あとさき》を綜合《すべあ》わして、何でもよほど貴
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