しろ気高い風を帯びていた。敬太郎はそれなり背中を彼の方に向けて自分の席に着いたが、探偵という文字に普通付着している意味を心のうちで考え出して、この男の風采《ふうさい》態度《たいど》と探偵とはとても釣り合わない性質のものだという気がした。敬太郎から見ると、この人は探偵してしかるべき何物をも彼の人相の上に有《も》っていなかったのである。彼の顔の表に並んでいる眼鼻口のいずれを取っても、その奥に秘密を隠そうとするには、余りにできが尋常過ぎたのである。彼は自分の席へ着いた時、田口から引き受けたこの宵《よい》の仕事に対する自分の興味が、すでに三分の一ばかり蒸発したような失望を感じた。第一こんな性質《たち》の仕事を田口から引き受けた徳義上の可否さえ疑がわしくなった。
彼は自分の注文を通したなり、ポカンとして麺麭《パン》に手も触《ふ》れずにいた。男と女は彼らの傍《そば》に坐った新らしい客に幾分か遠慮の気味で、ちょっとの間《ま》話を途切らした。けれども敬太郎の前に暖められた白い皿が現われる頃から、また少し調子づいたと見えて、二人の声が互違《たがいちがい》に敬太郎の耳に入《い》った。――
「今夜はいけな
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