》として、ほとんど頭の外へ落してしまったにもかかわらず、参考のためわざわざ書きつけにして机の抽出《ひきだし》に入れておいた。でまたその紙片《かみぎれ》を取り出して、自分のようで他人《ひと》のような、長いようで短かいような、出るようで這入《はい》るようなという句を飽《あ》かず眺《なが》めた。初めのうちは今まで通りとうてい意味のあるはずがないとしか見えなかったが、だんだん繰り返して読むうちに、辛抱強く考えさえすれば、こういう妙な特性を有《も》ったものがあるいは出て来るかも知れないという気になった。その上敬太郎は婆さんに、自分が持っているんだから、いざという場合に忘れないようになさいと注意されたのを覚えていたので、何でも好い、ただ身の周囲《まわり》の物から、自分のようで他人《ひと》のような、長いようで短かいような、出るようで這入《はい》るようなものを探《さが》しあてさえすれば、比較的狭い範囲内で、この問題を解決する事ができる訳になって、存外早く片がつくかも知れないと思い出した。そこでわが自由になるこれから先の二時間を、全くこの謎《なぞ》を解くための二時間として大切に利用しようと決心した。
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