でもなく、敬太郎のとうから痛切に承知しているところであった。
「何でもやります」
「何でもやりますったって、まさか鉄道の切符切もできないでしょう」
「いえできます。遊んでるよりはましですから。将来の見込のあるものなら本当に何でもやります。第一遊んでいる苦痛を逃《のが》れるだけでも結構です」
「そう云う御考ならまた私の方でもよく気をつけておきましょう。直《すぐ》という訳にも行きますまいが」
「どうぞ。――まあ試しに使って見て下さい。あなたの御家《おうち》の――と云っちゃ余り変ですが、あなたの私事《わたくしごと》にででもいいから、ちょっと使って見て下さい」
「そんな事でもして見る気がありますか」
「あります」
「それじゃ、ことに依ると何か願って見るかも知れません。いつでも構いませんか」
「ええなるべく早い方が結構です」
 敬太郎はこれで会見を切り上げて、朗らかな顔をして表へ出た。

        二十一

 穏《おだ》やかな冬の日がまた二三日続いた。敬太郎《けいたろう》は三階の室《へや》から、窓に入る空と樹と屋根瓦《やねがわら》を眺《なが》めて、自然を橙色《だいだいいろ》に暖ためるおとな
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