ているか、固より想像し得るはずがないので、ただそこに鋳出《いだ》された模様と、それがしまってあった袋とを見比べるだけで、何事も云わずにいた。袋は能装束《のうしょうぞく》の切れ端か、懸物《かけもの》の表具の余りで拵《こし》らえたらしく、金の糸が所々に光っているけれども、だいぶ古いものと見えて、手擦《てずれ》と時代のため、派手な色を全く失っていた。
婆さんは年寄に似合わない白い繊麗《きゃしゃ》な指で、九枚の文銭を三枚ずつ三列《みけた》に並べたが、ひょっと顔を上げて、「身の上を御覧ですか」と聞いた。
「さあ一生涯《いっしょうがい》の事を一度に聞いておいても損はないが、それよりか今ここでどうしたらいいか、その方をきめてかかる方が僕には大切らしいから、まあそれを一つ願おう」
婆さんはそうですかと答えたが、それで御年はとまた敬太郎の年齢を尋ねた。それから生れた月と日を確めた。その後《あと》で胸算用《むなざんよう》でもする案排《あんばい》しきで、指を折って見たり、ただ考《かん》がえたりしていたが、やがてまた綺麗《きれい》な指で例の文銭を新らしく並べ更《か》えた。敬太郎は表に波が出たり、あるいは文
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