けの事さ」
 健三の口調は吐き出すように苦々しかった。細君は黙って赤ん坊を抱き上げた。
「おお好《い》い子だ好い子だ。御父さまの仰《おっし》ゃる事は何だかちっとも分りゃしないわね」
 細君はこういいいい、幾度《いくたび》か赤い頬《ほお》に接吻《せっぷん》した。


底本:「道草」岩波文庫、岩波書店
   1942(昭和17)年8月25日第1刷発行
   1990(平成2)年4月16日第43刷改版発行
   1995(平成7)年2月15日第49刷発行 
底本の親本:「漱石全集 第6巻」岩波書店
入力:らんむろ・さてぃ
校正:細渕紀子
1999年1月22日公開
2004年2月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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