のであります。
Perceptual の叙述と、simile(私のいわゆる)との対はまずかようなものであります。前者は客観で知を主とし、後者は主観で感を主とするのが特性であります。しかし常態を申すと双方が幾分か交り合っている事は、例に因《よ》って説明した通であります。
これから第二段の対に移ります。第二段の片扉《かたとびら》で客観態度の方を conceptual な叙述と名づけたいと思います。それから片扉の主観態度の方をやはり在来の修辞学の言葉を借りて metaphor としておきます。意味はこれから説明します。
あるものを二度見てははああれだなと合点するのを recognition と申します。二度以上たびたび見て、やっぱりあれだなと承知するのを cognition と申します。もし一つものをたびたび見る代りに同種類の甲乙をたびたび見た上で、やはり同種類の丙《へい》に逢った時、これはこの種類の代表者もしくはその一つであると認めるのは conception の力であります。隣りの斑《ぶち》はこうであった。向うの白はこうであった。どこそこの犬はこうであったの経験が重なると、すべての
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