であります。柳は緑、花は紅、そのほかに何の奇があると云います。しかし実際はこう素気《そっけ》ない世の中ではありません。柳に舟を繋《つな》ぎたくなったり、花の下で扇を翳《かざ》したくなるのが人情であります。
 そこでこう云う事が起ります。真を描く文学は、真を究《きわ》めさえすればよろしいとなる。その結果他の情操と衝突しても、まあ好いとする。――読者の方では好いとしないかも知れませんが――しかしながら真は取捨なき事相であります。公平の叙述であります。好悪の念を離れたる描写であります。したがって褒貶《ほうへん》の私意を寓《ぐう》しては自家撞着《じかどうちゃく》の窮地に陥《おち》いります。ことに作以外の実際において、約束的にせよ善に与《くみ》し悪を忌《い》み、美を愛し、醜を嫌うものが、単に作物の上においてのみ矛《ほこ》を逆《さかさ》まにして悪を鼓吹《こすい》し、醜を奨励《しょうれい》する態度を示すのは、ただに標準を誤まるのみならず、誤まった標準を逆に使用している点において二重の自殺と云われても仕方がありますまい。書籍を買う条件で国から為替《かわせ》を取り寄せて、これを別途に支弁するからが、すで
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