ゥ、雲の国かであろう。あるいは雲と水が自然に近づいて、舵《かじ》をとるさえ懶《ものう》き海の上を、いつ流れたとも心づかぬ間に、白い帆が雲とも水とも見分け難き境《さかい》に漂《ただよ》い来て、果《は》ては帆みずからが、いずこに己《おの》れを雲と水より差別すべきかを苦しむあたりへ――そんな遥《はる》かな所へ立ち退いたと思われる。それでなければ卒然と春のなかに消え失せて、これまでの四大《しだい》が、今頃は目に見えぬ霊氛《れいふん》となって、広い天地の間に、顕微鏡《けんびきょう》の力を藉《か》るとも、些《さ》の名残《なごり》を留《とど》めぬようになったのであろう。あるいは雲雀《ひばり》に化して、菜《な》の花の黄《き》を鳴き尽したる後《のち》、夕暮深き紫のたなびくほとりへ行ったかも知れぬ。または永き日を、かつ永くする虻《あぶ》のつとめを果したる後、蕋《ずい》に凝《こ》る甘き露を吸い損《そこ》ねて、落椿《おちつばき》の下に、伏せられながら、世を香《かん》ばしく眠っているかも知れぬ。とにかく静かなものだ。
空《むな》しき家を、空しく抜ける春風《はるかぜ》の、抜けて行くは迎える人への義理でもない。拒
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