ゥげろう》を向《むこう》へ横切る。丘のごとくに堆《うずた》かく、積み上げられた、貝殻は牡蠣《かき》か、馬鹿《ばか》か、馬刀貝《まてがい》か。崩《くず》れた、幾分は砂川《すながわ》の底に落ちて、浮世の表から、暗《く》らい国へ葬られる。葬られるあとから、すぐ新しい貝が、柳の下へたまる。爺さんは貝の行末《ゆくえ》を考うる暇さえなく、ただ空《むな》しき殻を陽炎《かげろう》の上へ放《ほう》り出す。彼《か》れの笊《ざる》には支《ささ》うべき底なくして、彼れの春の日は無尽蔵に長閑《のど》かと見える。
砂川は二間に足らぬ小橋の下を流れて、浜の方へ春の水をそそぐ。春の水が春の海と出合うあたりには、参差《しんし》として幾尋《いくひろ》の干網が、網の目を抜けて村へ吹く軟風に、腥《なまぐさ》き微温《ぬくもり》を与えつつあるかと怪しまれる。その間から、鈍刀《どんとう》を溶《と》かして、気長にのたくらせたように見えるのが海の色だ。
この景色とこの親方とはとうてい調和しない。もしこの親方の人格が強烈で四辺《しへん》の風光と拮抗《きっこう》するほどの影響を余の頭脳に与えたならば、余は両者の間に立ってすこぶる円※[
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