tに印《いん》したるこの青年は、余ら一行を容赦《ようしゃ》なく引いて行く。運命の縄《なわ》はこの青年を遠き、暗き、物凄《ものすご》き北の国まで引くが故《ゆえ》に、ある日、ある月、ある年の因果《いんが》に、この青年と絡《から》みつけられたる吾《われ》らは、その因果の尽くるところまでこの青年に引かれて行かねばならぬ。因果の尽くるとき、彼と吾らの間にふっと音がして、彼一人は否応《いやおう》なしに運命の手元《てもと》まで手繰《たぐ》り寄せらるる。残る吾らも否応《いやおう》なしに残らねばならぬ。頼んでも、もがいても、引いていて貰う訳には行かぬ。
 舟は面白いほどやすらかに流れる。左右の岸には土筆《つくし》でも生えておりそうな。土堤《どて》の上には柳が多く見える。まばらに、低い家がその間から藁屋根《わらやね》を出し。煤《すす》けた窓を出し。時によると白い家鴨《あひる》を出す。家鴨はがあがあと鳴いて川の中まで出て来る。
 柳と柳の間に的※[#「白+轢のつくり」、第3水準1−88−69]《てきれき》と光るのは白桃《しろもも》らしい。とんかたんと機《はた》を織る音が聞える。とんかたんの絶間《たえま》から
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