tや、飛び起きて、机の前へ行って見ると、花は萎《な》え葉は枯れて、白い穂だけが元のごとく光っている。あんなに奇麗なものが、どうして、こう一晩のうちに、枯れるだろうと、その時は不審《ふしん》の念に堪《た》えなかった。今思うとその時分の方がよほど出世間的《しゅっせけんてき》である。
寝《ね》るや否や眼についた木瓜は二十年来の旧知己である。見詰めているとしだいに気が遠くなって、いい心持ちになる。また詩興が浮ぶ。
寝ながら考える。一句を得るごとに写生帖に記《しる》して行く。しばらくして出来上ったようだ。始めから読み直して見る。
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出門多所思。春風吹吾衣。芳草生車轍。廃道入霞微。停※[#「竹かんむり/(エ+卩)」、第3水準1−89−60]而矚目。万象帯晴暉。聴黄鳥宛転。観落英紛霏。行尽平蕪遠。題詩古寺扉。孤愁高雲際。大空断鴻帰。寸心何窈窕。縹緲忘是非。三十我欲老。韶光猶依々。逍遥随物化。悠然対芬菲。
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ああ出来た、出来た。これで出来た。寝ながら木瓜を観《み》て、世の中を忘れている感じがよく出た。木瓜が出なくっても、海が出なくっても、感じさえ出れ
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