セの度の非常に勝《まさ》っている、埃及《エジプト》または波斯辺《ペルシャへん》の光景のみを択《えら》んでいる。したがって彼のかいた画を、始めて見ると誰も驚ろく。英人にもこんな明かな色を出すものがあるかと疑うくらい判然《はっきり》出来上っている。
個人の嗜好《しこう》はどうする事も出来ん。しかし日本の山水を描くのが主意であるならば、吾々《われわれ》もまた日本固有の空気と色を出さなければならん。いくら仏蘭西《フランス》の絵がうまいと云って、その色をそのままに写して、これが日本の景色《けいしょく》だとは云われない。やはり面《ま》のあたり自然に接して、朝な夕なに雲容煙態《うんようえんたい》を研究したあげく、あの色こそと思ったとき、すぐ三脚几《さんきゃくき》を担いで飛び出さなければならん。色は刹那《せつな》に移る。一たび機を失《しっ》すれば、同じ色は容易に眼には落ちぬ。余が今見上げた山の端《は》には、滅多《めった》にこの辺で見る事の出来ないほどな好《い》い色が充《み》ちている。せっかく来て、あれを逃《にが》すのは惜しいものだ。ちょっと写してきよう。
襖《ふすま》をあけて、椽側《えんがわ》へ出
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