スたかみのある淡黄《たんこう》に、奥床《おくゆか》しくも自《みずか》らを卑下《ひげ》している。余は石甃《いしだたみ》の上に立って、このおとなしい花が累々《るいるい》とどこまでも空裏《くうり》に蔓《はびこ》る様《さま》を見上げて、しばらく茫然《ぼうぜん》としていた。眼に落つるのは花ばかりである。葉は一枚もない。
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木蓮の花ばかりなる空を瞻《み》る
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と云う句を得た。どこやらで、鳩がやさしく鳴き合うている。
庫裏に入る。庫裏は明け放してある。盗人《ぬすびと》はおらぬ国と見える。狗《いぬ》はもとより吠《ほ》えぬ。
「御免」
と訪問《おとず》れる。森《しん》として返事がない。
「頼む」
と案内を乞う。鳩の声がくううくううと聞える。
「頼みまああす」と大きな声を出す。
「おおおおおおお」と遥かの向《むこう》で答えたものがある。人の家を訪《と》うて、こんな返事を聞かされた事は決してない。やがて足音が廊下へ響くと、紙燭《しそく》の影が、衝立《ついたて》の向側にさした。小坊主がひょこりとあらわれる。了念《りょうねん》であった。
「和尚《おしょう》さんはお
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