「まで読まなけりゃならない訳になりましょう」
「妙な理窟《りくつ》だ事。しまいまで読んだっていいじゃありませんか」
「無論わるくは、ありませんよ。筋を読む気なら、わたしだって、そうします」
「筋を読まなけりゃ何を読むんです。筋のほかに何か読むものがありますか」
 余は、やはり女だなと思った。多少試験してやる気になる。
「あなたは小説が好きですか」
「私が?」と句を切った女は、あとから「そうですねえ」と判然《はっきり》しない返事をした。あまり好きでもなさそうだ。
「好きだか、嫌《きらい》だか自分にも解らないんじゃないですか」
「小説なんか読んだって、読まなくったって……」
と眼中にはまるで小説の存在を認めていない。
「それじゃ、初から読んだって、しまいから読んだって、いい加減な所をいい加減に読んだって、いい訳じゃありませんか。あなたのようにそう不思議がらないでもいいでしょう」
「だって、あなたと私とは違いますもの」
「どこが?」と余は女の眼の中《うち》を見詰めた。試験をするのはここだと思ったが、女の眸《ひとみ》は少しも動かない。
「ホホホホ解りませんか」
「しかし若いうちは随分御読みなす
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